【デザイン礼讃】デザインの原体験

デザイン

2020.05.08

心を大きく揺さぶられた圧倒的なデザイン。
生き方を示してくれた夢溢れるデザイン。
人と人をつないでくれた感動的なデザイン、、、
デザインと日々向き合う弊社スタッフが絶賛し崇めるデザインとは何か?
それぞれの視点とストーリーを交えご紹介致します。

空間デザイナーの高橋です。

デザインの仕事に携わっているとその考え方のプロセス、切り口の斬新さ、見た目の格好良さ、伝え方の面白さ、使い勝手の良さなど、日常的に何かしらの影響を受けています。中にはその後のデザイナー人生に多大な影響を与えてくれたデザインもあれば、好きになりすぎて肌身離さず身辺に置いておきたいようなデザインもあります。

そんな中から今回は自分の最も古い記憶の原体験を探ってみることにしました。

スーパーからコンビニへ

時は1992年。僕の住む片田舎のスーパーがコンビニに様変わりいたします。

それまで置かれていた近所のおばさん達の手作りおにぎりはきっちり三角形のフィルムにパッケージングされたおにぎりに変わり、雑誌、文房具、生活用品にいたるまでなんでも揃ったお店となりました。しかも昼夜を問わず営業している形態に当時中学生だった僕は衝撃をうけました。

そんな心踊る店内においてさらに僕の目を釘付けにしたのは、男性用化粧品のコーナー。髭剃り関連のアイテムやシャンプー、香水などがまとめられ置かれている棚に真っ白のボトルが整然と並ぶ姿を見たのです。

その名は資生堂「UNO」

当時は男性化粧品というと、おじさんたちが持つような劇的に渋いアイテムか、少し遊んでいるタイプのお兄さんたちが使うような色合いや宣伝コピーが過度なパッケージのもの、という印象しかなかったのですが、このボトルは真っ白。そしてグレーの極太の文字で「UNO」とだけ表記されているのです。

正直最初は何に使うものか全く分かりませんでした。 お店で売っているものはだいたいそのパッケージのイラストや画像、文字情報で 分かるものです。それが当たり前とさえ思っていました。しかし「UNO」の文字だけというインパクト。店内の他の商品陳列棚も魅力的なものに溢れているのですがこの一角だけは別空間でした。とにかく洗練されていてオシャレなのです。

頭から離れないほど惹きつけられた理由

その後、その白いボトルは“ムース”という整髪料だということが分かったのですが、真っ白な余白たっぷりのスペースに太く丸みを帯びたグレーのアルファベット文字が3つ並んだ世界が頭から離れられなくなってしまいました。

なんの説明もしない潔さ。
モノトーンだけの無駄のないスタイリッシュさ。
都会の洗練された香りが記憶のなかで充満しはじめました。ましてやお年頃の中学生男子ですから、アレを使えばモテるに違いない!と確信さえしはじめる始末です。田舎ではちょいワルな男子かスポーツの得意な男子が人気を有するものです。そのどちらにも属さない新たなジャンルが自分の活路を見出すに違いないと期待に胸を膨らませ、再びそのコンビニを訪れたのでした。

言葉で表現できないことを具現化する

高校卒業後、絵が好きだった僕は上京しデザインの道を歩み始めるのですが、その過程で自分が中学生の頃にみた「UNO」のボトルはグラフィックデザイン界の巨匠、松永真さんのお仕事だったということが分かりました。

デザイン依頼時の回顧録で松永さんはクライアントから様々な要望があったとおっしゃっています。
「細くて太く、柔らかくて硬く、ホットでクール。」という一見矛盾した条件と「あらゆるものがひしめき合うコンビニエンスストアという過酷な状況下で勝たなければいけない。」という難解な条件に松永さんも当初は困惑されたようですが、「言葉で明確に説明できていたらとっくに解決している。」「言葉で表現できないことを具現化し、目に見える形にすることこそデザインの本質だから。」と試行錯誤の末、辿り着いた結果がこの極限にそぎ落とされたパッケージとなったそうです。

その後はご存知の通り、男性化粧品のシェア上位に君臨し続け、30年近く経過した現在でも店頭でその「デザインの力」を遺憾無く発揮しております。

「デザイン」に携わりながら想うこと

今思えば「UNO」に出会った頃の僕は「松永真さん」どころか「デザイン」の「デ」の字も知らない普通の中学生だったのですが、「UNO」はその中学生にあらゆる生活用品が並ぶ熾烈な環境から見つけ出させ、都会のイマジネーションを膨らませ、異性にアプローチする勇気までも与えてくれました。「デザイン」とはそのような気持ちや行動にまで影響を与えてくれる可能性を秘めたものだと思いますし、生活のあらゆるシーンに潜んでいるものだと思います。

僕もいつかの未来に、自分の携わった「デザイン」で1人でもよい影響を受けてくれることを願い、日々思考を重ね頭を悩ませています。

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