【地元愛。譲れない想い。】
水と踊りの城下町、郡上八幡編

Culture

2020.11.05

〜 三百年の昔より 士農工商おしなべて 泰平祝う夏祭り 
音頭手拍子面白く 唄い楽しむ盆踊り 郡上の八幡出る時は 
雨も降らぬに袖しぼる これぞ真にこの里の 人の心をそのままに 
いつしか唄となりにける 〜

徹夜で踊る盆踊り

8月のお盆。朝4時50分。

ゆっくりと空が白み始め、それまで夜の暗がりに隠れていた山々の輪郭や古い町並みが姿を表す。

町の真ん中を流れる吉田川には朝靄が立ち込め、朝鳥の鳴き声が聞こえてくる。
あたりは一晩中踊り明かした踊り手達の心地よい熱気と達成感で満たされている。

今回私が紹介させていただくのは、岐阜県の中部に位置し奥美濃と呼ばれる地域「郡上八幡」(ぐじょうはちまん)です。日本三大盆踊りの一つ「郡上おどり」発症の地で、冒頭で紹介させていただいた一文はそのお祭りの最後に歌われる「まつさか」の歌詞です。

「郡上おどり」は日本で最もシーズンの長い盆踊りとして知られており、7月中旬から9月初旬までのほとんどの週末、計32夜開催されます。 通常は20時から23時までのお祭りなのですが、お盆の8月13.14.15.16日の4夜は20時から翌朝5時まで踊る「徹夜おどり」として開催されます。

中でも一晩中踊り明かし朝を迎える体験は、一度ならず二度、三度とやみつきになること間違いなし!
かく言う私も生まれ故郷は全く異なる土地の者なのですが、この体験がきかっけで毎年帰省するかの如く通いつめ、今や第二の故郷となってしまいました。

水と暮らす町

この町に通い詰めるまでに至った要因のひとつは、この地のロケーションです。

鵜飼で有名な長良川の上流に位置し、その支流である吉田川と小駄良川の合流地点を中心に町が形成されており、シーズンともなれば川には鮎の友釣りの竿で溢れ返ります。鮎は「清流の女王」と呼ばれるほど綺麗な水を好みますのでそれくらい水質が良いです。

ちなみに「大間マグロ」や「越前がに」のように「郡上鮎」は地名が付く地域特定産物に指定されています。訪れたのなら食さない訳にはいきません。

町の中心を流れる吉田川は透明度も高く、エメラルドグリーンに輝く水面から川底の石までがくっきり見えます。
そこで地元の子供達の通過儀礼となっているのが吉田川にかかる橋からの飛び込みです。

橋の欄干から水面まではおよそ12m。
その高さゆえ躊躇してしまう子も多いのですが、意を決して飛び込むその姿は、ノスタルジックで大人たちにも遠い昔に味わった「夏休み」を思い出させてくれます。(もちろん私は恐ろしくて飛び込めません。)

川のみならず山からの湧き水も豊かで、町の中心地にある「宗祇水」は「日本名水百選」第1号に選ばれるほどの水質を誇ります。
湧き水を利用して水路が町中を巡っており飲み水としては勿論、水路を区分けて食器を洗ったり、釣り用のおとり鮎を泳がせたり、スイカを冷やしたり、まさしく水とともに暮らす営みが町中で見受けられます。

「水が綺麗やから此処には蚊がおらんのよ」
「ここは水がええから酒も魚も豆腐もパンもコーヒーも美味いでな」

と話す地元の方々。
冗談混じりながらもこの地で暮らす人々の「水」に対する自負と揺るぎない想いを感じます。

お城と懐かしい城下町

もうひとつこの町のロケーションを引き立たせているのが“城下町”ということです。

吉田川のほとり、八幡山にそびえる郡上八幡城は司馬遼太郎作「街道をゆく」のなかで「日本で最も美しい山城で…」と讃えられるほどで、城下からの眺めやお城から見下ろした町並みはどちらも見ごたえのある景観です。
城下では至る所からお城を目視できるので町探索をしながらその存在を感じますし、夜はライトアップされるので踊りながら眺めるのもまた格別です。

町の町名は「殿町」「大手町」「職人町」「鍛冶屋町」等と区分けられ、今でも城下町の名残りが感じられます。
家並みも歴史があり、間口が狭く奥に長い町屋造りの建物が軒を連ね、その佇まいから小京都とも呼ばれます。

お城の防御のため各通りの突き当たりにはお寺が配置されており町の中だけでも13ものお寺があります。中には盆踊りの着替えや休憩のために境内の軒下を解放してくれるお寺もあり、祭りが始まるまでゴロリと雑魚寝をしながら待つこともできます。
徐々に夕日に染まる町並みを眺め、涼しい風とともにひぐらしの鳴き声を聞く・・そんなゆったりとした贅沢な時間が楽しめます。

生まれ育ったわけではないのに訪れる度に懐かしさを感じるのは、このような日本の原風景が随所に残されているからかもしれません。

みんなで楽しむ盆踊り

さて、ここまで揃ったロケーションで笛や太鼓、お囃子の音が聞こえてきたらもう踊らない訳にはいかないのではないでしょうか?

踊り方を知らない…。リズム感が…。
大丈夫です。「郡上おどり」は誰でも参加できるし間違いなく誰かが手取り足とり教えてくれます。(自分がそうでした)

冒頭の歌詞にも 〜士農工商おしなべて 泰平祝う夏祭り〜とあったように、身分分け隔てなく全員で楽しむお祭りなのです。

格好も自由です。せっかくなので浴衣がお勧めですが、ジーンズ、スカート、着ぐるみ等々、何でもありです。ですが足元だけは下駄にしてください。そうでないと楽しみが半減してしまうくらい重要なアイテムなのです。

一般的にイメージされる盆踊りとは手をひらひらと華やかに踊る姿かもしれませんが「郡上踊り」は下駄をガンガン鳴らします。
男性の参加者が多いのもその影響かもしれません。

〜雨も降らぬに 袖絞る〜

1時間もあればこの歌詞の通り汗びっしょりになります。それを徹夜で踊るので何度も体力の限界が訪れることでしょう。しかしその限界を超えたところに自分でも出会ったことのない新たな“自分”がいるのです。(無理はなさらずに)

下駄で朝日を迎えてみませんか?
きっとその頃にはここ、郡上八幡が第二の故郷になっているはずです。

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